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漫画家・巻来功士の心ぴく映画コラム-『ヘイトフル・エイト』

功士的「心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム番外編、第47回」は、 待ちに待った、クエンティン・タランティーノ監督最新作『ヘイトフル・エイト』です。 前作「ジャンゴ/繋がれざる者」に続き、またまた西部劇。 「ジャンゴ~」はいわばヒーロー物の復讐劇だとすると、「ヘイト~」はヒーローなど一人もいない、ほとんどの場面が密室で描かれる謎解きウエスタンとでもいうところでしょうか。出て来る登場人物全てが曲者、お互いを誰も信用してはいないストーリーは、まさにカーペンター監督の大傑作「遊星からの物体Ⅹ」(そのオマージュとしてカート・ラッセルが出ていると言う話も・・)のよう。 しかし、怪物など出ない紛れもない西部劇なので誤解なき様、その目で似ている所を確かめて下さい。...

出だし、雪原の中突っ走る駅馬車、そこに流れる音楽がマカロニウェスタンの名曲の数々を手掛けたエンリオ・モリコーネ。否応なしに、雰囲気が盛り上がり、期待が高まります。主人公など一人もいない群像劇、これぞタランティーノの真骨頂、「レザボア・ドッグス」しかり「パルプ・フィクション」しかり「イングロリアスバスターズ」しかり、どれもが傑作になっているということは・・・・もちろんこの映画も傑作だと言う事です。 密室の会話劇とバイオレンスアクションだけで3時間の長丁場を一瞬のダレ場もなく見せ切るとはやはり天才の修業でしょう。 誰が生き残るか全く分からない展開、突如起こるバイオレンスの嵐、そして中盤の大どんでん返し。ため息が出るほど見事です。 しかし、映画館に来て驚きました。これがR-18作品とは。 バイオレンス&セックスシーンが絡めばR-18だと思っていたのに、これはどういう事なのでしょうか?なぜセックスシーンなど無いこの作品がR-18で、残虐シーン満載の邦画「○○の○○」がPG12で、女性が裸にされて殺されるシーンがある邦画が、R-15、それなのに「ヘイト~」だけがなぜ?どう見てもR-15が妥当だと思うのですが、皆さん如何でしょうか?この傑作映画を高校生が見られないとすると、映画関係に進むかもしれなかった若者の芽を詰む事になると思うのですが・・・業界の大いなる損失です。全く分からない、我が国の業界事情に気持ちの悪さを感じます。 という話は置いといて、中盤以降の展開にいたっても誰が生き残るか分からない展開に手に汗握り、ラストがまさに私が大好きなハードボイルド・ノワール的大団円。 3時間たっぷり楽しませて貰いました。タランティーノ、ノワール、そして西部劇好きには堪えられない1本です。 超お薦めの、心ぴく度90点以上の大傑作、是非ご覧ください。

ヘイトフル・エイト

監督・脚本:クエンティン・タランティーノ  音楽:エンニオ・モリコーネ  美術:種田陽平 出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、    ジェニファー・ジェイソン・リー、ウォルトン・ゴギンス、デミアン・ビチル、 ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン

配給:ギャガ   

(c)Copyright MMXV Visiona Romantica, Inc. All rights reserved.

<公式サイト>http://gaga.ne.jp/hateful8/

◆巻来功士先生の自伝的漫画『連載終了!』(イースト・プレス刊)好評発売中!あの頃のジャンプでの7転8倒を描写!映画愛にもあふれた漫画です。ぜひご一読を!

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