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漫画家・巻来功士の心ぴく映画コラム-『キャロル』

「功士的、心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム番外編、第44回」は、トッド・へインズ監督の大恋愛映画『キャロル』です。 恋愛経験は数少なく恋話は苦手な私ですが、映画の恋愛物は大好きなので興味深く見ました。 (あくまで映画の話ですが)恋愛は、社会や地域から理解されず、前に立ちふさがる壁が高ければ高いほど、恋する二人の絆は強くなり、心の中の炎は強く熱く燃え上がります。全世界を敵に回しても愛に生きる二人。その孤独と切なさが前面に出なければ恋愛映画ではないと言い切ってしまいたいほどです。その、私が好きな恋愛映画の要素を全て満たしていた映画がアン・リーの名作「ブロークバック・マウンテン」でした。 そしてこの「キャロル」は、それに対をなす、紛れもない名作でした。

まず、アカデミー賞女優、ケイト・ブランシェット(キャロル)とルー二―・マーラ(テレ―ズ)の演技が、素晴らしい。それ以外の言葉が見つかりません。「ブローク~」と同じ1950年代、社会に無いものとされていた感性を持つキャロル、そして、自分がそんな感性を持っていようとは、夢にも思わなかった...テレ―ズ、そんな二人が出会い心寄せあってゆく過程の演出の細かさ、丁寧さは、今年最高の出来だと言い切って良いでしょう。 互いの心が引かれれば引かれるほど、世間から孤立してゆく二人。切なさがこみ上げてきます。これぞ恋愛映画の王道。本当に素晴らしい。そして、一線を越えた二人に訪れる、社会という巨大な壁。たった2人で立ち向かわなければならない困難。2人きりで戦うのか、諦めるのかギリギリの選択。それが静かに内に秘めた炎を覆い隠すように50年代のアメリカンポップスの名曲に乗せて語られてゆきます。なんと、私が、最高に心燃える恋愛映画の要素が全て詰まっている映画でした。

しかし、甘っちょろい映画ではありません。それを強調するかのように当時の権力者の暴走が、実際の映像としてテレビ画面やなにげなく置かれた新聞記事に映し出されています。そう、権力とはいつの世でも、<なにより国家を愛せよ!>という大号令の元、恋愛、人間愛、家族愛、全ての愛を破壊する事実をこの映画は教えてくれているのです。トッド・へインズ監督の名作「ベルベット・ゴールドマイン」や「エデンより彼方へ」でもその主張は一貫しています。とにかく、全ての大人に見て欲しい恋愛映画、そう、人間愛を高らかに歌い上げた恋愛映画と言っても良いでしょう。だから、恋愛映画が苦手な男性にも超お薦めです(ルー二―・マーラが綺麗ですよ~。もちろんケイト・ブランシェットも)。

当然女性にも超お薦めの、心ぴく度90点~95点、またまた、今年の功士的心ぴくベスト10に確実に入る名作です。是非ご覧ください。

『キャロル』

2016年2月11日(木・祝)より、全国大ヒット公開中!

公式サイト http://carol-movie.com/

監督:トッド・ヘインズ

出演:ケイト・ブランシェット、ルーニー・マーラ

原作:パトリシア・ハイスミス

配給:ファントム・フィルム

(C)NUMBER 9 FILMS (CAROL) LIMITED / CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION 2014 ALL RIGHTS RESERVED

◆巻来功士先生の自伝的漫画『連載終了!』(イースト・プレス刊)好評発売中!あの頃のジャンプでの7転8倒を描写!映画愛にもあふれた漫画です。ぜひご一読を!

後でもう一度お試しください
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