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漫画家・巻来功士の心ぴく映画コラム-『スターウォーズ/フォースの覚醒』


「功士的、心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した)映画コラム番外編第38回」は文字通り世界中が大熱狂の、これぞ米ハリウッド映画超大作『スターウォーズ/フォースの覚醒』です。 言わずと知れた1983年作「ジェダイの帰還」の続編であり30年後の物語、懐かしい顔がいっぱい、ハン・ソロ、レイア姫、チューバッカ、そして・・・。

1999年より始まったエピソード1~3とは明らかに違うテイストを持った映画になっていました。フォースやジェダイの血を受け継ぐ者達の話はエピソード1~3でもじっくりと描かれていますが、それがテーマだったので本作も当然同じような感じだと思われるかもしれませんが、大きく異なる点があります。それはハン・ソロの存在です。エピソード1~3はそれが無かったせいで、良くも悪くも1本調子なストーリーで(アナキンがダースヴェイダーになるだけ?の話なので)遊びが少ない感じを、ジャー・ジャー・ビンクスなどのCGキャラで風通しを良くしようとしましたが見事に失敗していました。この息苦しさが強調された(その息苦しさがエピソード3だけで、逆に悲劇のストーリーが盛り上...げる良い結果になっていましたが・・)

ギリシャ悲劇のようなエピソード1~3に居なかった存在が、まさに宇宙のアメリカンカウボーイ、流れ者のアウトロー、ハン・ソロ船長だったのです。彼の存在があったからこそ、気真面目なルーク・スカイウォーカ―との対比で、エピソード4・5は傑作になりました。そして世界の観客は、ルークよりもハン・ソロのカッコよさに熱狂し、演じていたハリソン・フォードは瞬く間に世界的大スターになっていったのです。そのスターウォーズのもう一人のヒーローといえる、ハン・ソロが本作で復活しました。これだけでエピソード4・5・6(6は微妙ですが(笑))ファンは大満足なのに、そのヒーローが老体に鞭打って頑張る姿はまた最高、さすが大スター、ハリソン・フォードのオーラが半端なく作品全体を満たしていて、とても楽しい作品になっています。

ストーリーはエピソード4(1977年)をなぞり、5の設定を逆にして合体させた感じとでも言いますか・・(とにかくその目で確かめてください)。それがテンポよく展開し、私は大いに楽しめましたが、細かく丁寧な説明や伏線が次回に持ち越されたまま突き進むストーリーなので、不満を感じる方がいるかもしれません。しかし、それは世界的お祭り映画スター・ウォーズ、ここは抑えてじっくりとエピソード8を待ちましょう。

思えば1975年ベトナム戦争が米敗戦に終わり、苦悩の現実を直視する傑作群アメリカン・ニューシネマ全盛の中、現実から逃れたい!そんなものはもう見たくない!という空気の中から生まれた映画がスター・ウォーズでした。

当時全くリアリティーがない能天気な悪と正義の戦いに熱狂したアメリカ人、そして世界の人々(私もです)。現実の戦争を嫌というほど見せつけられた世界の人々に諸手を挙げて受け入れられる映画は、遥か銀河の彼方の戦争しかなかったのです。そんなエポックメーキング的作品だからこそ生まれたヒーローが能天気な流れ者カウボーイ、ある意味地上ではピエロにしか見えないマッチョイズムを引きずっていたハン・ソロ船長でした。彼は宇宙が舞台だからこそ世紀を超えたヒーローになりえたのです。それが本作では、エデプスコンプレックス(?)やファザーコンプレックス(?)などのトラウマにまみれた若者達、大人になりきれない若者達に直接関わりあいにならなければならない老ヒーローという設定。もう1970年~80年代のヒーローのように、(知った事か!)とオサラバすることもできず、若者達を保護・指導しなければならない立場になってしまった彼に与えられた答えとは・・。主人公レイやフィン等よりハン・ソロに年が近い私は、その行動に大いに胸が熱くなりました。この映画の肝は全てそこに集約されていると言っても過言ではないでしょう。ただ1点書かせてもらえば、大団円で盛り上がった直後に終わる(続く)というエピソード5のようなエンディングにしてほしかった。しかし、それは細かい点で、凄く楽しめた映画である事に間違いありません。

続編を必ず見たい!そう思わせたスペース・オペラの傑作です。心ぴく度89点。 全ての世代が楽しめる超お薦め作品です。

《ここからネタばれになるかも知れないので、用心の為、観ていない人は読まないでください!!ファンに対してサービス満点なのは良いのですが、ユアン・マクレガーとサー・アレック・ギネスが同じオビワンを演じたように、年老いた彼の役に名優を配する事が出来たのではないかと思うのですが・・。やはりマニアの方はお怒りになるでしょうか?ハリソン・フォードはオーラがある名優なので画面が持ちますが・・・。彼は少し心配です。次回以降杞憂に終わればよいのですが・・^^;》

【STORY】 『ジェダイの帰還』から約30年後を舞台に、フォースを巡る全く新しい“家族の愛と喪失の物語”が描かれる。 砂漠の惑星で家族を待ち続けている孤独なヒロイン、レイの運命は“ある出会い”によって一変することに…。 旧シリーズの不朽のキャラクターたちに加えて、重要なカギを握るドロイドBB-8、ストームトルーパーの脱走兵フィンなどが登場。世界中が注目する悪役は十字型のライトセーバーを操るカイロ・レン。

【STAFF】

監督:J.J.エイブラムス 

脚本:ローレンス・カスダン & J.J.エイブラムス AND マイケル・アーント

製作:キャスリーン・ケネディ, p.g.a.J.J.エイブラムス, p.g.a.ブライアン・バーク, p.g.a.

製作総指揮:トミー・ハーパージェイソン・マクガトラン

撮影監督:ダン・ミンデル, ASC, BSCプロダクション・デザイン:リック・カーター AND ダレン・ギルフォード

編集:メアリー・ジョー・マーキー, ACEメリアン・ブランドン, ACE

衣裳:マイケル・カプラン

視覚効果&アニメーション:インダストリアル・ライト&マジック

音楽:ジョン・ウィリアムズ

(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

【巻来功士】 1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させ現在鋭意執筆中。2016年2月6日、最新単行本・自伝『連載終了!』(イーストプレス刊)発売決定。

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