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海外マンガ通信『Cambodia Chatter Boy 第3回 「いびつな発展の中でも元気いっぱいにコスプレを楽しむ若者たち」


 カンボジアに長らく住んでいて少々のことでは驚かなくなってきたと自負しておりましたが、まだまだ想像を絶することが起きてきます。  今年、2016年になってから、公道を無免許あるいは免許不携帯でバイクを運転した場合には厳密に罰金などの刑罰になると、カンボジア政府からの公式発表が出されました。えっ?あたりまえでは?と疑問に思われる方も多いでしょう。いかにカンボジアといえども道路交通法はあり、バイクを運転するにも免許が必要だという決まりは以前からあったのですが、バイクに乗っているカンボジア人で免許を持っているのは、推定で10%くらいだと言われてます。なるほど、ウチの新入スタッフの面接のときも、10人に1人くらいしか免許を持ってなくて、我が社で団体契約している傷害保険の対象外にされてしまうからということで、免許を強制的に取らせているので、確かにそんなもんだと思います。これまでお咎めなかったところ、突然上からこんな発表があったものですから、お巡りさん達が喜んで検問しまくって罰金の荒稼ぎをする事態になり、カンボジア全土で大混乱が起こりました。

カンボジア首都プノンペンの交通

 それでもって、政府はどう収拾付けるかな~と思っていたら、フン・セン首相の鶴の一声、「125cc以下のバイクは免許なしでも乗っていい」・・・これにより、事態は収拾されたのですが、交通ルールの勉強もしてない子供たちまでが益々バイクに乗るようになってしまったらどーなっちゃうんでしょうか。まあでもこれがカンボジアです。ちなみに特別ボーナスが稼げなくなったお巡りさん達は、同じように違反者の多いノーヘルメットやノーシートベルトの取り締まりに標的を切り替えて、社会のため(?)取り締まりに精出しておられます。

 そんな実におおらか過ぎるカンボジアなので、インターネット社会の昨今では、若者たちが海外の文化をどんどん取り入れて、次々と新しい習慣を創り出してきています。いつの時代も、世界のどこでも、政治や経済や大人の都合に関係なく、若者たちは実に自由にネットワークを作って仲間たちと自己表現を楽しみ、そのための努力を惜しみませんね。数年前まではほとんど見られなかったクリスマス、バレンタイン、ハローウィンの習慣は特にこの2,3年で広がってきており、ウチの事務所の入り口にも昨年末のクリスマスからクリスマスツリーが若いスタッフたちによって飾られるようになりました、でもクリスマスの意味はと聞いても答え「・・・・?」、やっぱりわかってませんでしたね。 そしてそんな中、これまた意外にも早く流行ってきているのが、「オタク」少年少女たちによる「コスプレ」。急速なネット環境の普及に加えて、他に娯楽が少ないことも手伝って、プノンペンの若者たちは日本の若者以上にスマホを使って情報を収集して画像や動画を楽しんでます。そして、日本のアニメのなかでも特に海外で英語に翻訳されて放送されているものがYouTubeなどの動画サイトで見られることから、「ナルト」、「ドラゴンボール」、「ワンピース」などは当然のこと、アニメとしては日本でも新しい「東京喰種・トーキョーグール」や、なんと、あの「ワンパンマン」(アンパンマンじゃありません、英語では”One Punch Man”になってますね)のファンも多いのには驚きです。トーキョーグールの主人公「金木研(かねきけん)」などは最も人気のあるコスプレの一つにもなってます。さすがに頭剃ってワンパンマンまでやる人はまだ見かけませんが。

コスプレイベントの会場で

 論より証拠、先日プノンペンで開催されたコスプレイベントの写真をご覧ください。いや、コスプレ用品なんか売ってる所ないのに、どうやって準備してきたのか、レベル高いですよね。

 実は私もこのコスプレイベントのことを、私の漫画家養成セミナー参加者の子から教わったもので、「先生も行こうよ~」と誘われて、ロクに期待しなくて行ったのですが、カンボジアの若者たちがこんな風に伸び伸びと好きなことに夢中にとりくんで、自分を表現しているのは素晴らしいことだと感じました。

 こうしたコスプレイベントも今では年に数回行われるようになり、年々参加者の数も、なりきるレベルも上がってきただけでなく、昨年はコスプレ好きな子供が多く通う高校の学園祭のようなところでも生徒たちによるコスプレファッションショーの披露まであったそうです。

 こんな風にネットを通じて漫画の本よりもアニメやコスプレが先に入ってきてしまっている今のカンボジアですが、やはりアニメの基は漫画です。アニメもよいですが、印刷された漫画を自分のペースで、また、自分で咀嚼しながら読みながら感動を消化していくという漫画の魅力も伝えていきたいです。そして、さらにもう一歩進んで、読書習慣をも飛ばしてスマホいじりに夢中になってしまっている今のプノンペンの子供や若者たちに、本を手に取る楽しみを知るきっかけにもできたらと考えてます。

 私の子供のころには、よく母親に「マンガばっかり読んでないで、小説とかも読みなさい!」と叱られたものですが、今のカンボジアにおいては「スマホばっかりいじってないで、マンガも読みなさい!」と、プノンペンのお母さんたちに言ってもらえるようになると嬉しいですね。そう、なんであれコスプレであれ一生懸命になるのはいいことですが、読書(漫画含む)も大事ですから。

高校内でのイベント、Mashiroの漫画セミナーの生徒達でもあります

ニッジェイアンチュン(カンボジア語で「ところで・・・」) コスプレパーティーに参加、ということで私も何かしないといけないと思いましたが、私が今さらこの歳で最近の漫画の主人公に扮してもしょうがないので、Amazonの通販で「火影四代目」、つまりナルトのお父さんのマントを購入して羽織ってみましたが、やっぱり歳はごまかせません、確実に浮いてましたが、そんな私でもおおらかなコスプレ少年少女たちは優しく受け入れてくれました。2月にまたコスプレイベントがあるようですが、次はどんなコスプレしようか、私も今から楽しみです。

Mashiro著作の「リングのうさぎ」5巻は二月発売予定。

【Mashiro】 少年期の夢はボクシングの世界チャンピオン、青年期の夢は漫画家で某少年漫画誌新人漫画賞の最終選考作品に名前を連ねていたが、就職と共に夢は自然消滅。その後サラリーマン、海外援助団体勤務を経て現在はカンボジアで会社経営しながらカンボジア初のストーリー漫画を制作・出版・販売、また、漫画家養成セミナーを開催してカンボジア人漫画家の育成を行いながら、昔の夢2つを同時に実現中。 http://risma.biz/Usagi.html

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