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【レポート】上田慎一郎監督特集上映会 「4/上田 うえだぶんのよん」


2016年1月15日、シネ・リーブル池袋で上田慎一郎監督の特集上映会 「4/上田 うえだぶんのよん」が開催され、短編4作品(『恋する小説家』『彼女の告白ランキング』『猫まんま』『テイク8』)が一挙上映されました。

自主制作映画で数々の賞を受賞、2015年には4人の新鋭監督によるオムニバス映画『4/猫 ねこぶんのよん』(1編『猫まんま』を監督)が全国公開された上田慎一郎監督。今年も活躍に期待が高まる監督のトークを取材させていただきました!

上映後のトークショーには上田監督とゲストに俳優の芹澤興人さん(『テイク8』主演)が登壇、作品を振り返ります。 MCはふくだみゆきさん。

左:上田慎一郎監督  右:芹澤興人さん

―― 4本続けて上田監督作品を見ていただいたんですが、今回は製作順に上映させていただきました。どうでしたでしょうか。

芹澤:女性の描きかたがだんだん地に足がついてきましたね。

上田:ぼく、それまったく同じことを言おうと思っていました、ビックリしました。モノづくりをする男が女を放ったらかしにして、強い女性に叱られて成長するという話を毎回やっているなと思いまして。でも彼女のほうが成長しているんですね。

『恋する小説家』は「小説やめて私とつきあってよ」で、『猫まんま』は「漫才を続けてもいいけど私はついていけない」で『テイク8』は「私が女優をやめてあなたを支える」というふうに、自分のなかで女性が変わってきたと思います。

芹澤: 確かに女性の目線がしっかりと、理にかなった形になってきているという気がしました。

『恋する小説家』 2011年/31分

上田: 『恋する小説家』は5,6年前ですが、勢いで拙いというか、荒削りですね。

芹澤: 20代だとまだ女性の気持ちってわからないですよね。

上田: 『テイク8』の前に僕、結婚したんですよ。だから本当に女性に対する描き方が変わったんだと思います。

芹澤: ラストの手前の女の子がいなくなってからの喪失感をもう少し長く見たいと思いました。

上田: 『恋する小説家』は間延びしているところは間延びしているし、詰めすぎているところは詰めすぎているし まだ拙いところがあるな、と見直して思いましたね。

『彼女の告白ランキング』 2014年/21分

芹澤: 「彼女の告白ランキング」はびっくりしました。他の3作品と比べると、この頃はとんがってたのかな、と。(笑) 人の意見を受け付けない強さがあるというか。ここまでやられたらもう何も言えないというか。上田さんが分からなくなりました(笑)

上田: そうですね、この作品だけ異質な感じですね。

『猫まんま』2015年/25分

芹澤:『猫まんま』は面白かったですね、すごくいいと思いました。お互い相手のことを思いやっているのがいいなと。もっと長編にしてほしいと思いました。

上田:ストレートな感想をありがとうございます(笑) 『猫まんま』は25分なんですが、お芝居のことや父との確執とか描ききれなかった部分があるので長編の圧縮版みたいになってますね。でも本当に毎回同じことを描こうとしているんだな、と思いました。毎回男がモノづくりに没頭して、女性を放ったらかしてそういう構図は一緒だなと。

芹澤:自分で見返して成長している部分はありますか?

上田:やっぱり女性の描きかたですね。最初はそんな考えていなかったんですよ。『恋する小説家』のときは「小説をやめて私とつきあってください」というのは物語を展開させるための機能だったのが、『猫まんま』や『テイク8』のときは登場人物の気持ちに沿って展開するようにしなければいけないと思うようになってきました。

――(芹澤さんに)ご自身が出演された『テイク8』はいかがですか?

『テイク8』 2015年/20分

芹澤:自分の演技は恥ずかしいんですが、台本をもらって気をつけなければなと思ったのは面白いシーンをゆるゆるっとやりたいというか。「笑わせてますよ」とやりすぎるとすべるので、そこは本当に気をつけなくてはいけないと思いました。

上田:そうですね、笑わせよう感がだんだん「笑わせる」というより自然に「笑っちゃう」というふうに笑いの質も変えていってるんだな、と自分で思いました。

――最後に芹澤さんから見て上田監督はどういうかたですか?

芹澤:脚本がすごくうまい人だと思います。役者として現場に行く立場からすると脚本がうまくて演出がそこですんでいるというか。イメージの統一をはかれるような書き方をしているなと読んだときに思いました。

上田:脚本を書くのは好きですし、『恋する小説家』は特に脚本や、役者さんの個性で押していた部分があるんですがそれだけではダメだなと思っていろいろ「つかみどころのないもの」を入れるようになっててきました。

芹澤:たぶんですが、抜き方を覚えたのではないかと。ここまで書くと役者さんが考えなくなるから削るとか、出てきたんじゃないですか。

上田:確かに役者さんの動きを指示するカッコ書きは書かなくなってきました。現場で起こることを信じ始めましたね、昔よりは。

芹澤: いい言葉ですね。ありがとうございました。

上田: ありがとうございました。

上映後のフォトセッション には各作品のキャストのみなさん12名が集合。

◇ちょっと冴えない男性と、キラキラと可愛い女の子たちが繰り広げる4つのショートフィルムに笑ったり、涙したり、最後はとても温かい気持ちになりました。今でも一番大好きなビリー・ワイルダーの映画が浮かびました。ぜひ機会がありましたらご鑑賞ください!(取材: Osawa)

【作品紹介】

『恋する小説家』 2011年製作 ○監督・脚本:上田慎一郎 ○出演:堀内紀臣 秋山ゆずき 岡本裕輝 葛上昇悟 山崎智恵 細井学 ○受賞歴: 「福岡インディペンデント映画祭2014」60分部門グランプリ受賞 「PLABO映画祭2013」最優秀作品賞(監督賞)受賞 「第二回JIM×JIMアワード」特別賞受賞 ほか、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭、第六回沖縄国際映画祭、TAMA NEW WAVE 2012 ある視点部門など、国内で約20の映画祭等で入選・上映。現在までに3冠を受賞

『彼女の告白ランキング』 2014年製作 ○監督・脚本:上田慎一郎 ○出演:中山雄介 榎並夕起 橋本昭博 鐘築健二 山口友和 細井学 石訳智之 坂川良 ○受賞歴: 「したまちコメディ大賞 2014」準グランプリ 「福岡インディペンデント映画祭2014」コメディ賞 「第18回 水戸短編映像祭」ベストアクター賞(橋本昭博) ほか、タオス短編映画祭(アメリカ)、ショートショートフィルム・フェスティバル、札幌国際映画祭等、水戸短編映像祭など、国内外30以上の映画祭で入選・上映され、現在までに8冠を受賞。

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『猫まんま』 2015年製作 ○監督・脚本:上田慎一郎 ○出演:三浦誠己 木南晴夏 掛田誠 中山雄介 西辻こずえ 片岡哲也 曽我真臣 山本真由美 2015年に全国劇場公開されたオムニバス映画「4/猫 ねこぶんのよん」の中の1編。上田の初商業監督作。

『テイク8』 2015年製作 ○監督・脚本:上田慎一郎 ○出演:芹澤興人 山本真由美 牟田浩二 山口友和 細川佳央 福島龍一 北井敏浩 曽我真臣 ○受賞歴: 「第三回 八王子ShortFilm映画祭」グランプリ

◆上田 慎一郎 (ウエダ シンイチロウ) 中学生の頃からハンディカメラで友人と自主映画を制作。2009年、25歳の時に仲間を集い、映画製作団体PANPOKOPINA(パンポコピーナ)を結成。当団体では現在までにで10本の映画を製作し、国内で20以上の映画祭で入選・受賞を果たす。「100年後に観てもおもしろい映画」をスローガンに、不変性の高いメッセージをポップにくるんだ娯楽性の高いエンターテイメント作品を創り続けている。世界のポップを背負って立つ映画製作チームを目標に日々邁進中。

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