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功士的、心ぴく映画コラム番外編第31回-『ヒトラー暗殺、13分の誤算』『顔のないヒトラーたち』

ー『ゴッドサイダー』『メタルK』などのヒット作の作者であり、映画好きとしても知られる漫画家・巻来功士が最新の映画を観賞し、心臓がピクピクするほど感動及び興奮した作品”心ぴく映画”を紹介するのが 『功士的、心ぴく(心臓がぴくぴくするほど感動した?)映画コラム』です。今回巻来先生にご紹介いただくのは『ヒトラー暗殺、13分の誤算』『顔のないヒトラーたち』の2作品です。

今回の心ぴくは、ドイツ映画『ヒトラー暗殺、13分の誤算』『顔のないヒトラーたち』の2本立てです。両作品とも、実話を基に描いています。

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』は、最も進んだ民主主義憲法と言われていたワイマール憲法下のドイツが、いかにしてナチズムに席巻されていったか、市井の家具職人の眼を通し描かれる作品です。たった一人で、ヒトラー暗殺を実行する心の軌跡を丹念に捉えていて、身に詰まされます。 彼の素晴らしさは、まだドイツがヨーロッパ戦線で快進撃を来り返していた時に、全体主義の熱狂に惑わされずに、ヒトラー及びナチズムの本質を見抜き、暗殺計画を実行した事にあります。しかし結果は・・・。 この映画の見事さは、暗殺計画の結果から描き、回想によって、なぜ彼がヒトラー及びナチズムを粉砕しようと立ち上がらざるを得なかったかが、分かりやすく丹念に描かれている点です。今こそ、近視眼的に政治状況を判断して、短絡的意見を吐いてしまう、私を含めた我が国民は見ておかなくてはならない映画だと思いました。主人公の抵抗の姿勢は簡単に全体主義に陥りやすい人(国民)ほど見習わなければなりません。全体主義がどれほど怖いか、そんな戦中の日本の実態を描き恐怖を感じる映画は、我が国のメジャー系では作られなくなり、戦争中の抵抗の実話など明らかに上映出来なった現実があります(創作者やそれに携わる人たちが、その事にあまりに鈍感で恐怖と感じなくなっている所が本当に怖い!深作欣二、今村昌平、岡本喜八、大島渚、新藤兼人、他キラ星のごとき名監督達の意思を受け継ぐものはいないのか!?)。確実にアナクロな全体主義が幅を利かせてきた我が国の国民が、この、ドイツでは英雄とされる主人公を素直に称賛できるのか?ぜひ聞いてみたい、そんな民主主義の土台が堅牢かどうかを測る試金石にもなる傑作です!超絶お薦めです!

『ヒトラー暗殺、13分の誤算』

監督 オリヴァー・ヒルシュビーゲル CAST クリスティアン・フリーデル/カタリーナ・シュットラー/ブルクハルト・クラウスナー/ヨハン・フォン・ビュロー 上映時間 114分 製作国 ドイツ 配給会社 ギャガ ©2015 LUCKY BIRD PICTURES GMBH, DELPHI MEDIEN GMBH, PHILIPP FILMPRODUCTION GMBH & CO.KG cBernd Schuller 公式サイト http://13minutes.gaga.ne.jp/ 10/16(金)より TOHOシネマズ シャンテ、シネマライズほか全国順次ロードショー

『顔のないヒトラーたち』は、第2次世界大戦終結から13年後のドイツの現実が語られている映画です。 なんと、この13年後まで、ほとんどのドイツ国民はアウシュビッツの存在を知らないでいた事に驚かされました。敗戦に疲れ切ったドイツ国民は、自国の恥になる出来事を隠したかったのです。占領軍であるアメリカも、ドイツ人とユダヤ人に余計な軋轢を生まないように、ことさら事実を公表しようとしませんでした。自国の恥になるような事は、たとえ事実でも公表しないのが愛国者、この考えはなんと戦後70年を経過しようとしている我が国でまかり通っている、まさにアナクロニズム的考えです。しかし、ドイツの若き検事は、自国民が引き起こした、恐ろしい事実を知り彼らの行為を白日のもとに曝け出し、さらに断罪しようとしたのです。当然、ドイツの為に戦った同胞を犯罪者にするな!という抗議の嵐に包まれ、身の危険さえ覚えるようになります。しかし、彼を支えていたのは、人種はちがえど無残に殺されていった罪なき人々の声なき声。つまり本当の「正義」の為でした。是非「正義」の本当の意味を知るためにも、この映画を見て欲しい。いや、今こそ、この2本のドイツ人が作った、ドイツの負の遺産を真正面から見つめたこの映画を我が国民は見なくてはならない。見て考えなくては我が国に幸福な未来は訪れない。そう本気で思える素晴らしい傑作です。両映画合わせて、功士的心ぴく度190点以上の超絶お薦め作です。是非、是非ご覧ください!

『顔のないヒトラーたち』

監督:ジュリオ・リッチャレッリ 脚本:エリザベト・バルテル、ジュリオ・リッチャレッリ 製作:ヤコブ・クラウセン、ウルリケ・プッツ 撮影:マルティン・ランガー「白バラの祈りゾフィー・ショル、最期の日々」 ロマン・オーシン「プライドと偏見」 音楽:ニキ・ライザー「わが教え子、ヒトラー」、セバスチャン・ピレ

ヨハン・ラドマン:アレクサンダー・フェーリング「ゲーテの恋」「イングロリアス・バスターズ」 マレーネ:フリーデリーケ・ベヒト「ハンナ・アーレント」 トーマス・グニルカ(記者):アンドレ・シマンスキ シモン・キルシュ:ヨハネス・クリシュ フリッツ・バウアー(検事総長):ゲルト・フォス

2014/ドイツ/123分/シネマスコープ/ドルビーSRD/ドイツ語/原題:Labyrinth of Lies © 2014 Claussen+Wöbke+Putz Filmproduktion GmbH / naked eye filmproduction GmbH & Co.KG 配給:アットエンタテインメント

10/3ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館(モーニング&レイトショー) 他全国順次ロードショー

【巻来功士】 1958年長崎県佐世保市生まれ。1981年、「少年キング」誌で『ジローハリケーン』でデビュー。 「週刊少年ジャンプ」に発表の舞台を移し、代表作『ゴッドサイダー』を執筆。その後、青年誌を中心に『ザ・グリーンアイズ』『瑠璃子女王の華麗なる日々』『ゴッドサイダーサーガ神魔三国志』など数々の作品を連載。 クラウドファウンディング「FUNDIY」にて『ゴッドサイダー・ニューワールド(新世界)〜 ベルゼバブの憂鬱 〜』の制作 プロジェクトを成功させその後も作品を発表し続けている。 TWITTER @godsider1

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