【レポート】東京国際映画祭 松山ケンイチ、北川景子 故森田芳光監督へのラブレターの・ようなもの
左から 伊藤克信、北川景子、松山ケンイチ、杉山泰一監督
(C)2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会
第28回東京国際映画祭にて10月29日「の・ようなもの のようなもの」のワールドプレミア上映がTOHOシネマズ 六本木ヒルズにて行われ、松山ケンイチ、北川景子、伊藤克信、杉山泰一監督が舞台挨拶に登壇した。
本作は故森田芳光監督の劇場デビュー作『の・ようなもの』の35年後を描くオリジナル青春ストーリー。『の・ようなもの』(1981)から『僕達急行 A列車で行こう』(2012)まで16本の森田作品に助監督、監督補として携わった杉山泰一が初監督し、「森田組」の歴代豪華キャストが集結した。
杉山監督: 僕は森田監督の『の・ようなもの』で最初に助監督をして仕事をさせてもらいました。それからずいぶん数多く監督の作品に就いてきたんですけれども残念ながら4年前に監督は他界されました。この映画はそんな監督への恩返しの思いも込めて作りました。今ここにいる3人のキャストの方々も同じような思いで現場で出演していただいたと思っています。といっても堅苦しい映画ではないので『の・ようなもの』を見ていなかったり森田作品は見たことがないというかたでも十分楽しめる作品になっていると思いますので 安心してご覧になってください。
-本作は特に森田芳光ファンにはたまらない映画になっていますが、松山さん演じる「志ん田(しんでん)」は森田監督の『僕達急行 A列車で行こう』の小町役がモチーフになっているようですが、撮影中はどんなことを考えながら演じましたか?
松山:最初台本を読んだときは「志ん田」としか書いてないんですよ。衣装合わせしてみたらどっかでこれ見たことがあるなと思って「これ小町っぽくないですか?」って聞いたんですよ。そしたら「小町だね」って。それでそのまま決まっちゃったんですけれど。現場に入ったら結局みんないろんな役を引きずっている人たちばかりだったんですよ。それでそういうことかと。これも一つのオマージュであり、ラブレターじゃないかと感動したんですよね。
-北川さんも『間宮兄弟』の夕美役で名前も同じで役を引きずっていると思いますか? 北川:森田監督と初めてお仕事させて頂いたのが『間宮兄弟』の夕美役で、台本を今回頂いたときに全く同じ「夕美」って書いてありましたのでこれは森田組の洒落というか、そういうことなんだなと。撮影に行ったら10年前の間宮兄弟の衣装がそこにおりまして、衣装やヘアメイクさんとも「夕美のときはこうだったね」っていう話をしながら役を作っていきましたので 夕美が生きていて成長したらこんな感じなんだろうなと思って演じさせていただきました。
-伊藤さんは35年前の森田監督のデビュー作で主役の「志ん魚(しんとと)」を演じて、今回また同じ役を演じられていかがでしたか?
伊藤:35年経って続編ができるなんてあり得ない話でビックリなんですけれど それが成立したのは『の・ようなもの』の尾藤さん、デンデンさんはじめ我々兄弟弟子が全員生きていた、ということですね(笑)もし誰かがお亡くなりになっていたらこういう映画もなかったかもしれない話で長生きに感謝ですね(大拍手)
悪い人が誰も出てこない映画で 見終わったあとにすごい爽やかになって、もうちょっと元気に生きてみようかなと思えるような映画なのでぜひご期待ください。
-そして杉山監督は『の・ようなもの』以降、『僕達急行 A級列車で行こう』まで森田芳光監督の作品にずっと助監督として参加されて、今回はその記念すべきデビュー作の続編を作るうえでどんな思いで演出されましたか?
杉山監督: 最初にこの話を頂いたときは森田監督ファンの期待を裏切ることにならないかと正直尻込みしました。ただまぁ、監督と長い間つきあっていてこういう時に監督はどう言うかな、と考えてみたときに森田監督も黒澤監督のリメイクをするくらいですから「自分の続編ぐらいやっちゃえ、やっちゃえ」という声がしてきまして。それなら監督の遺産である出演者、スタッフをふんだんに使って逆に居直って撮ってみようと決意しました。
-松山さんは今回落語家の役ということで落語も披露してましたが、普通のセリフを覚えるのとは違いましたか? 松山:はい、やっぱり全然違いますね。落語になると、性別や年齢を超えてすべての役を一人でやらないといけなくてとても大変だと思いますが、やはりとても魅力的なものだなと思いました。出てくる人物自体も人情味があってイキな人たちが多いし、役者としても 間の取り方や役の切り替え方など勉強させていただきました。
【同窓会のようなロケ現場】
-現場はどんな雰囲気でしたか?
北川:初めてお会いするキャストのかたもいらっしゃるんですけれどやっぱり森田監督とご一緒しているチルドレンというか組子というか同じ雰囲気を感じるのか、伊藤さんも初めてお会いしたという気がしなかったですし、すぐひとつのチームや家族のようなアットホームな雰囲気になれたと思います。10年ぶりの夕美役でしたが現場に行くとすっと役に入れたし、ケンイチくんとも久しぶりでしたがそんな感じもしなくて楽しくて家族のような現場でした。
伊藤:森田監督の現場はすごく楽しい。私は監督の作品に多分一番出ていて12,3本出ているんですけれども、会う人会う人が同窓会みたいな雰囲気でした。「元気だった?」「生きてた?」みたいな(笑) その現場を一番森田監督のことを良く知っている杉山監督がまとめてくれていたので毎日仕事に行くのが本当に楽しかったです。
【ラブストーリーの・ようなもの】
皆さんを代表して杉山監督と松山さんからメッセ―ジをお願い致します。
杉山監督: さきほど『の・ようなもの』を見ていないお客様も楽しめると言いましたが、もし少しでも興味がわいたらぜひ『の・ようなもの』を見てください。そしてもう一度本作を見に来ていただけるとその良さがわかると思います。ぜひよろしくお願いいたします。
松山:今、こうやって景子ちゃんと舞台挨拶して 『サウスバンド』のときに「次は景子ちゃんと松山の二人で映画を撮りたい」って森田監督に言っていただいたのを思い出します。ラブストーリーを撮りたい、って言ってくれて それが今回こういう形で実現できたのかなと思いました。ラブストーリーのようなものでもあり、青春映画のようなものでもあり、いろんな「のようなもの」が詰まった作品だと思います。そして見ていただいているかたそれぞれの「のようなものじゃないもの」も見つかるような気がします。そして伊藤さん、公開は来年ですからね、それまではくれぐれもお体に気を付けてください(笑) 今日は本当にありがとうございました。
故森田監督へのオマージュ作品でありながら終始明るく笑いの絶えない舞台挨拶だった。出演はほかに野村宏伸 (『メインテーマ』)、鈴木亮平(『椿三十郎』『私出すわ』)、佐々木蔵之介(『間宮兄弟』)、 塚地武雅(『間宮兄弟』)、宮川一朗太(『家族ゲーム』)、仲村トオル(『悲しい色やねん』)等々森田作品の歴代出演者から懐かしいメンバーや豪華キャストが集結。来年1月の公開までに過去作品チェックをしておくとより楽しめそうだ。
タイトル:『の・ようなもの のようなもの』
2016年1月16日(土)より、新宿ピカデリーほか全国公開
配給:松竹
(C)2016「の・ようなもの のようなもの」製作委員会 (取材・撮影/Osawa)
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