【レポート】東京国際映画祭 「百日紅 ~Miss HOKUSAI~」原恵一監督にQ&A!
東京国際映画祭JAPAN NOW特集で「百日紅 ~MISS HOKUSAI~」が上映され、監督の原恵一さんが劇場に登壇し、観客からの質問に答えた。
「クレヨンしんちゃん ~嵐を呼ぶアッパレ!戦国大名~」、「河童のクゥと夏休み」、「カラフル」など、抒情的な作風で知られる原監督のルーツが、「百日紅」を通して語られた。
――『百日紅』は83~88年に発表された作品ですが、なぜ今、映画化されたのですか?
原恵一監督(以下、「原」):僕は20代の頃、原作者の杉浦日向子さんの原作漫画に出会って「この人はすごい!」と感動して、いつか杉浦さんの作品をアニメーションにしようと思い、この数十年、アニメの仕事をしてきました。
僕にとって『百日紅』の映画化は、「なぜ今?」ではなく、「やっと今作れた」なんです。これまで関わってきた作品にはすべて杉浦さんの影響が出ていると思います。
――原作のどんなところに魅力を感じましたか?
原:江戸時代において、かっこいい生き方を「粋」といい、反対を「野暮」と呼びますが、杉浦さんは「粋」な作品を描いた作家です。江戸時代をべたついたノスタルジーとして表現せず、登場人物も安易に泣かしませんでした。僕も杉浦さんを倣って、心では泣いてても目に涙は見せないキャラクター達を描きました。
――原監督と杉浦先生の作品は非常に繊細な日常の描写をするところが共通していますが、監督は日常の描写にどんなこだわりをお持ちですか?
原:アニメーションは平面上に描かれたもので、そこに私たちと同じ生命はないのですが、アニメのキャラクターに「こういうこと言うよね」とか「こういうことするよね」という仕草をさせると、生命が生まれます。
そういった生命を観客の皆様に感じてほしくて、「他の国の作家はここまでやらない」と思われるくらい、日本人としてのプライドを持ってこだわって作っています。
――映画のラストシーンに、現代の東京の風景を差し込むという原作にない表現がありましたが、どんな意図がありますか?
原:脚本の段階ではあのラストシーンは描いてなかったのですが、絵コンテを描いているときに江戸時代から現代へジャンプする演出を思いつきました。劇中に描かれた風景は形を変えて現在にも残っていて、江戸時代を生きた『百日紅』のキャラクター達と現代に生きる私たちは地続きである、ということを見せたかったんです。江戸時代はファンタジーではなく実在した時代として、忘れないでいてほしいと思います。
――貴重なお話をお聞かせくださってありがとうございました。
原:こちらこそご清聴ありがとうございました。
◆映画「百日紅 ~Miss HOKUSAI~」公式サイト:http://sarusuberi-movie.com/index.html
◆映画「百日紅 ~Miss HOKUSAI~」予告編:https://youtu.be/otsXD8pkW4A
(取材・撮影/hosaka)