【レポート】"今初めてアニメの仕事をしている"映画「機動戦士ガンダム THE ORINGIN 」安彦良和×田中真弓トークイベント
安彦良和氏(右) 田中真弓さん(中央) 司会の石井誠氏(右)
10月22日から31日まで開催中の第28回東京国際映画祭。特集上映「ガンダムとその世界」、「機動戦士ガンダム THE ORINGIN Ⅰ 青い瞳のキャスバル」が新宿ピカデリーにて上映され、上映後には総監督の安彦良和氏、キャスバル・レム・ダイクン役を演じた声優の田中真弓さんのトークショーが行われた。
石井:安彦さんは田中さんとは『THE ORIGIN』の以前から、お仕事をご一緒される事が多かった様ですね。 安彦:僕は基本的に絵描きなのであまり声優さんの知り合いがいないんですよ。録音スタジオにもあまり顔を出したりしない方です。田中さんは数少ないお付き合いのある声優さんです。それ以上に、一方的に押しかけファンです。 本作のキャスティングは音響監督の藤野貞義さんにお任せしていたのですが、キャスバルだけは田中さんにお願いしたいと自分からリクエストしました。
田中:安彦先生との出会いは、ほぼ私のデビューからなんですよ。テアトル・エコーの付属養成所にいた23歳くらいの時に『白い牙 ホワイトファング物語』という作品でご一緒して以来です。
安彦:あの作品はキャラクターデザインを担当しただけでなので、キャスティングにはかかわっていなかったんです。あの時は肺の病気をしていた病み上がりの時期だったんですが、キャラクターデザインは出来るだろうという事で絵を描いた作品でした。あの作品が田中さんのデビューだったという事は後から伺いました。あの時と声は変わってないよね。 田中:そんなことないんですよ(笑)。中々あの時のように澄んだ声は出せなくなっています。
石井:『白い牙 ホワイトファング物語』は1982年にテレビスペシャル番組として1度だけ放映されて、その後ソフト化もされていないので、中々見れない貴重な作品ですね。
石井:その後2年後に、安彦さんが原作、監督、キャラクターデザイン、メイン・メカデザイン、作画監督を務められた『巨神ゴーグ』でご一緒されてますね。
安彦:はい。主人公の田神悠宇(たじまゆう)は台本の段階から田中さんの声だよなと思っていました。
石井:当時はお二人で役作りに関して何かお話されていたんですか? 安彦:『巨神ゴーグ』は2クールで全26話だったんですが、絵描きとしてシリーズを通して出来るだけ均質な一定のレベルを保った作品にしたいというのがあって、僕はスタジオでひたすら絵を描いていたので、録音スタジオには行かなかったんですよ。それはあまり良くない事だと思いながら、その時は自分をそういったスタンスに位置付けたので、おそらく一度も行ってないです。チーフ演出の鹿島典夫君と、音響監督の千葉耕市さんにお任せしてました。声優さんとは打ち上げで「初めまして」というかんじでご挨拶しましたね(笑)。
田中:当時は特に安彦先生からの演技指導はなかったですね。
安彦:『巨神ゴーグ』に関しては自分の仕事は声優さんが困らない様に絵を提供することだと思っていたので、ひたすら描いていました。
田中:とても演じやすかったです。
石井:『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』との共通点でいうと、池田秀一さんもご出演されているんですよね。 安彦:「巨神ゴーグ メモリアルアートワークス」という本が2014年に発売されたんですが、その中で田中さんと池田さんが対談されていたんですよね。それまで『THE ORIGIN』のキャスティングは頭になかったんですが、それを読んでまた田中さんとお仕事出来かもしれないと思って、思い切ってキャスバル役をお願いしたんです。
石井:完成した『THE ORIGIN』をご覧になっての感想は如何ですか? 田中:本当に先が早く見たくてワクワクしますね。 安彦:田中さんには近日公開(10月31日)の『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア』の方も観ていただいたと思いますが、成長したキャスバルをご覧になって如何でしたか? 田中:池田さんの演じるシャアの声が、思っていたものと全く違って驚きました。変声期を迎えて大人になる前の微妙な青年の声ですよね。第一声を聞いた時におっ!と思いました。
安彦:少年時代のキャスバルの田中さんの声から、大人のシャアの池田さんの声に変化していく中間期の役ですから、相当難しかったと思います。
石井:最後にお二人に一言ずつお願いします。
田中:私のような「ガンダム」作品の新参者が言うのも恐縮ですが、本当に面白い作品ですので、是非劇場でご覧になってください。私も皆さんと一緒にこれからも「ガンダム」を楽しみたいと思います。
安彦:私は一度アニメから退いて漫画家になったのですが、今回『THE ORIGIN』の監督を引き受けて、今大変良い思いをさせていただいてます。
昔の時代のアニメの制作現場は、非常に手薄な資材の中で作品を作っていましたし、自分の才能の無さも含めて、良い想い出ではないアニメ時代の体験を自分は持っているんですけど、その時と照らし合わせると、今になって初めてアニメの仕事をしているなと思えるくらいに充実しています。注文を出すとスタッフが直してくれるんです。こんな経験は初めてです(笑)。
『THE ORIGIN』に関しては1話、2話とも出来にも非常に満足しています。これから先もスタッフとキャストとの皆さんのおかけで、愛すべき映像が出来ると確信を持っております。長丁場になるかもしれませんがどうぞお付き合いください。宜しくお願いします。゜
新宿ピカデリーに置かれた『機動戦士ガンダム』とコラボレーションしたTOYOTA「Aqua」
『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』