漫画家 にわのまこと interview vol.2
にわのまこと先生のファンのみなさま、お待たせいたしました!ニックネーム"赤鮫"こと、近藤哲也がにわのまこと先生を直撃インタビュー、後編スタートいたします!!!
赤鮫――ザ・モモタロウのマスクのデザインはどうやって考えられたんですか?
にわの――最初は歌舞伎のクマドリに近いデザインだったんだけど、ギャグ漫画としてこのデザインはどうかな?と思ってシンプルにしました。 当たり前なんですが漫画のキャラは顔が見えないといけないし、マスクマンなので目も眉毛も見えないと表情がわからないので目の周りのスペースを大きくしたんです。
赤鮫――前髪とチョンマゲのアイデアはどこから?
にわの――そのことはモモタロウの話をすると必ず出るんですが、漫画のキャラはシルエットだという持論があって、シルエットになったときにそのキャラクターだとわからなければダメだと思って、日本風にマゲ付けるかって、モモタロウのマスクはシルエットにこだわった結果ですね。
赤鮫――もうひとつのプロレス漫画『ターキージャンキー』の誕生秘話などありませんか?
にわの――『ターキージャンキー』は週刊コミックバンチという雑誌に2001年から載せてもらってたんだけど、連載前の打ち合わせで担当さんに「にわのまことはプロレス漫画だと思うんだよ、俺の知る限りマスクの後ろの紐までちゃんと描いたのは“にわのまこと”が最初だ」って、そんなふうに言ってもらったら嬉しいじゃないですか。 「やっぱりプロレス漫画でマスクマンか」と思って、当時WWFというエンターテイメントプロレスが流行ってて、お客さんを喜ばすような主人公のプロレス漫画をやろうと。 でも日本ではこのテーマはどうなんだというのがあって、エンターテイメントを前面に出すと勝負論は完全におざなりになるし、試合に勝つんじゃなくてお客さんを喜ばすために試合やってるのかと悩みました。 ターキー自身のデザインは名前のとおり七面鳥が元でクチバシのあるシルエットもガッチャマンぽくてカッコいいなと思って。
赤鮫――同じプロレス漫画でモモタロウはターキーの世界に出そうと思わなかったんですか?
にわの――それは考えてなかったね。 ターキーの世界にモモタロウは出しづらいですね。 モモタロウのギャグは異質なんで、ターキーの世界観とは噛み合わないんですよ。 ただ真島にはプロレスリング・エイジア(ターキーの所属する団体)は出したいなと思うんですよ。
赤鮫――『陣内流柔術流浪伝 真島、爆ぜる!!』復活の理由は?
にわの――真島の中で出てくる技はファンタジーじゃないですか、格闘技ブーム全盛のときに真島を描いても笑われるだけだなと。 格闘技ブームがだんだん下火になってきて今だったらやってもいいかなと思い始めた時に、全作の「陣内流柔術武闘伝 真島クン、すっとばす‼︎」がコンビニ文庫などで評判が良いと聞いたのと、タイミングよく前の担当さんが新しくコミックブレイクという雑誌を創刊するんで、そこで真島の続編をどうでしょうかとお話をくれて。 担当さんの思惑と僕の欲求が一致したんです。
その担当さんに真島、爆ぜるの1話のネームを見せたらビックリするぐらい泣いたんですよ。 「すいません、自分の好きだった漫画が今こうして一番に見れるなんて感激で」。 こんなに喜んでくれる人がいて、こっちも嬉しくなって頑張ろうと思ったんですよね。 担当さんの涙が僕を本気にさせたんです。
赤鮫――復活の背景にはそんなことがあったんですね。
にわの――それでね、真島の続編に入る前に前作を3日かけて読み返しましたんですが、その当時のことをいろいろ思い出してね、「締め切りに追われて描きたいことをぜんぜん描けてないな」とか、 土武郎と野々宮がロスで試合してる場面で、「あっ、ここで真島が終わりと言われたな」って。 あっ、でも、この続編を描くとなるとこのあとの展開も考えなきゃあかんのかと……。
赤鮫――『真島、爆ぜる!!』でこだわってるところとかありますか?
にわの――格闘漫画ってドンドン強いキャラや強い技が出てきたりするじゃないですか、でもそういう見せかた以外にミステリーやホラー色を出したいと思ったんですよ。 僕の中では真島は格闘漫画なんですが、違う分野から味付けしたのがあの展開です。 主人公が記憶を失ったというのはよくある展開だと思うのですが、読者が真島と同じ目線で過去をたどって、先に何があるのか紐解いていくのも連載漫画としてはありだなと。 これからもやりたいことや戦わせたい場所など沢山あるので楽しみにしててください。
赤鮫――話は変わりますが、仕事で落ち込むことなどはありますか?
にわの――なんぼでもありますよ! 毎日ありすぎて言葉に出来ないぐらいです。 こんな絵じゃダメだ! こんな仕事じゃダメだ!って。 日々思ってますよ。
赤鮫――漫画家になってよかったですか?
にわの――俺にはやっぱり漫画しかないからね。 でも学生プロレスの経験があったから『THE MOMOTAROH』は描けたと思うし、ノアの丸藤正道選や全日本プロレスの鈴木鼓太郎選手も、モモタロウや真島の技をやろうと思ってたと言ってくれて、そういうのを聞くと本当に嬉しいですし、漫画家冥利に尽きますよ。
赤鮫――夢を追いかけてる人に何か一言。
にわの――僕が言うのもおこがましいんですが、本気でやるしかないと思うんです。 周りからどう言われても、周りが気になっても本気で突き進めば道は開けると思います。
赤鮫――インタビューありがとうございました。 これからも楽しみにしています。
にわの――こちらこそありがとうございました。 『陣内流柔術流浪伝 真島爆ぜる!!』よろしくお願いします。 ※本記事は「赤鮫が行く‼︎」2013年12月の記事を転載したものです。